紅茶と君と僕。

気ままに、そのままに。

新しい季節が来てしまう

また春がやってきた。

 

初めて君とあったのは、去年の今頃だった。青いステンカラーのコートから華奢な脚が覗く、とてもおっとりとした性格の君。

その時の僕は、極度に人を避けようとする性格だった。挨拶や会話は必要な分だけ、踏み入らず踏み込ませず、それでやり過ごそうとしていた。

面倒ごとは嫌い。関われば何かしらの感情を持ってしまい、それを考え込んでしまうのが、ひどく面倒なのだ。

だからこそ、影を薄く、皆に等しく優しく、感情は抑えめ。それで行こうと決めていた。

 

「一緒に帰りませんか」

そう言ってくれた君は、ずいぶん努力をしていた。今までの経験を踏まえて、自分を少しでも変えようと、職場の雰囲気を良くしようと、前向きに歩いていた。

 

 

まぶしかった。温かかった。

なるほど、たまにドラマや小説なんかで見られる「太陽」という表現は、こういうことを表すんだろうなと。

 

 

あれから1年が経ってしまった。

不思議で仕方がない。1年という短い期間で、君はたくさんのものをくれた。僕には返しきれないものばかり。声も、涙も、ぬくもりも、全部渡してくれた。

 

たぶん、僕は立ち直れた。

地下鉄で、君の横で泣いてしまった僕は、もう過去の人となった。

 

ありがとう。